若くして糖尿病になると、認知症になりやすい?
2021.06.01
糖尿病(2型糖尿病のこと)の人は、認知症になりやすいことが知られています。糖尿病のない人に比べて認知症のリスクは約2倍に高まるといわれます。
さらに、このほど、糖尿病を発症した年齢が低いほど、その後の認知症発症リスクが高くなることが報告されました。
糖尿病と認知症の関係
糖尿病になると、なぜ認知症になりやすいのでしょうか。
ひとつの理由は、糖尿病で高血糖状態が続くと、血管がダメージを受けて動脈硬化が進行するからです。そうすると、血管性の認知症のリスクが上がります。
また、血管性の認知症だけではなく、アルツハイマー型認知症にもなりやすいことがわかっています。
脳内に「アミロイドβ」と呼ばれるたんぱく質がたまりはじめると、次第に、脳に老人班という“シミ”ができ、やがて神経細胞が死滅することが、アルツハイマー型認知症の主な原因として知られています。糖尿病で血管が障害されると、この「アミロイドβ」を排泄する働きが落ちるため、アルツハイマー型認知症にもなりやすくなると考えられています。
糖尿病の発症年齢が低いほど、認知症が増える
さらに、フランスのパリ大学の研究者らが発表した研究結果では、糖尿病の発症年齢が若いほど、その後の認知症のリスクが高くなることがわかりました。
この研究では、イギリス・ロンドンの公務員を対象とした研究と医療記録のデータを用いて、糖尿病の発症年齢と認知症との関連を調べました。
10,095人の参加者(1985年から88年時点で年齢35~55歳)のうち、2019年までの追跡期間(中央値31.7年間)の間に糖尿病を発症した人は1,710例、認知症と診断された人は639例でした。
認知症の発症率(1,000人・年あたり)は、70歳時点で糖尿病のない人は8.9人でしたが、糖尿病を発症した年齢が下がるにつれて、認知症の発症率は上がっていました。
・糖尿病を65歳以上70歳未満で発症した人……10.0人(1,000人・年あたり)
・糖尿病を60歳以上65歳未満で発症した人……13.0人(同)
・糖尿病を60歳未満で発症した人…………………18.3人(同)
60歳未満で糖尿病になると、認知症リスクは2倍以上
この研究では、70歳時点で糖尿病のない人の認知症発症リスクを「1」とした場合、60歳未満で糖尿病を発症した人は「2.12」倍、60歳以上65歳未満で発症した人は「1.49」倍、65歳以上70歳未満で発症した人は「1.11」倍、と報告しています。
糖尿病は、初期にはほとんど自覚症状がないため、健康診断などで血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値が多少高くてもそのままにされてしまいやすいものです。でも、認知症をはじめ、将来的な病気のリスクが増えるのが、糖尿病の怖いところ。
血糖値やHbA1cが高い人は、まずは生活習慣の見直しからはじめましょう。
◎「Association Between Age at Diabetes Onset and Subsequent Risk of Dementia」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33904867/