「“DNAスイッチ”が運命を変える」――NHKスペシャル
2019.06.01
先日のNHKスペシャルで「エピジェネティクス」の話をしていました。
エピジェネティクス――。聞いたことはあるでしょうか?
番組では、「DNAスイッチ」と紹介されていました。
DNAと言えば、いわば“命の設計図”。
その人がどんな体質なのか、どんな能力を持っているのか、どんな病気になりやすいのか……は、生まれ持ったDNAによっておおよそ決められている。
そう思いきや、その命の設計図であるDNAには“スイッチ”があったのです。
スイッチをオンにしたりオフにしたりすることで、じつは運命はいかようにでも変えられるのではないか――という内容でした。
双子の運命が変わる理由も
有名なのが双子の研究です。
一卵性双生児は同じDNAをもちますが、その後、まったく同じ運命をたどるかというと決してそうではありません。
確かに若い頃はそっくりな顔をしているものの、だんだん、見た目にも変化があらわれますし、たとえば一方はあるときがんになり、もう一方は病気知らず……というように、同じ年代で同じ病気を発症するわけでもありません。
それは、後天的な要素によって、DNAのスイッチのオンオフが切り替えられるからではないか、と言われています。
番組では、がん患者さんを対象とした海外の研究が紹介されていました。
この研究では、がんの患者さんの遺伝情報を調べたところ、全員が「がんを抑える遺伝子」をもっていたそうです。ところが、6割もの人が、せっかくの「がんを抑える遺伝子」のスイッチがオフになっていたのです。
女王蜂と働き蜂を分けるものはなに?
番組では山中伸弥先生とタモリさんがMCを務めていたのですが、山中先生の話で「なるほど、おもしろいな」と思ったことの一つが、女王蜂の話です。
ミツバチには女王蜂と働き蜂がいることは有名です。
でも、同じようなDNAをもつのに、ほとんどのハチは働き蜂になり、あるハチは女王蜂になるのか……。言われてみたら不思議です。
それも、「DNAのスイッチ=エピジェネティクス」が関係していました。
メスの働き蜂と女王蜂はまったく同じ遺伝子をもつものの、幼虫の頃にローヤルゼリーを食べて育ったハチだけが女王蜂になるそうです。そして、女王蜂になると、働き蜂に比べて体は1.5倍に、寿命は20倍になり、1日に卵を2000個も産むと言われています。
それほどの運命の違いも、生まれ持ったDNAではなく、後天的な要因によるDNAのスイッチの切り替えによって引き起こされていたということです。
DNAのスイッチの切り替え方
生まれ持ったDNA自体は変えられなくても、スイッチのオンオフによって、その発現の仕方は変えられる。そうわかったら、気になるのは、スイッチのオンオフはどうして切り替わるのか、です。
がんをはじめ、さまざまな病気を抑える遺伝子は、どうやったら“オン”になるのか。
糖尿病をはじめ、さまざまな病気になりやすい遺伝子は、どうやったら“オフ”になるのか。
大きく関わることがわかっているのは、「食事」と「運動」だそうです。
健康には食事と運動が大事ということは誰しもわかっていることですが、「わかっているけれど続かない」という人は多いはずです。でも、DNAのスイッチさえも左右すると思ったら、「ちょっと食事に気をつけよう!」「運動しよう!」と、モチベーションが上がるのではないでしょうか。