がん免疫を高める腸内細菌を発見
2019.02.01
腸内細菌という言葉は世間にすっかり定着し、「腸内細菌は大事」「腸は大事」という考えも誰もが知るところになったように思います。
でも、「大事」とは知りつつ、腸内細菌がどのくらい活躍しているのかと聞かれれば、思い浮かぶのは、「お腹の調子を整えてくれる」といった漠然としたイメージではないでしょうか。
そんななか、興味深いニュースを目にしました。それは、「がん細胞への攻撃力を高める11種類の腸内細菌を見つけた」というもの。見つけたのは、慶應義塾大学の本田賢也教授や理化学研究所の研究チームです。
腸内細菌でがんが小さくなる⁉
がん細胞は、健康な人の体内でも日々できては免疫細胞がやっつけていることが知られています。また、免疫細胞のなかでも、「CD8T細胞」と呼ばれる免疫細胞が、がんや感染症の抑制において重要な働きをしていることもわかっています。
今回特定された11種類の腸内細菌は、このCD8T細胞の働きを活性化していることが判明したのです。
マウスを使った実験では、皮下に腫瘍を植え付けたマウスに対して、がん治療薬の一つである「免疫チェックポイント阻害剤」に加えて11種類の腸内細菌を混ぜたものを投与した場合と、薬のみを投与した場合を比べたところ、腸内細菌も組み合わせたほうが腫瘍の大きさが半分以下に縮小したそうです。
そして、マウスの腫瘍には、CD8T細胞がたくさん集まっていました。さらに、CD8T細胞を取り除いて同じ実験を行ったところ、腫瘍縮小効果は見られなかったそうです。
つまり、11種類の腸内細菌は、CD8T細胞を集めて活性化することで抗がん効果を発揮していたのです。
なお、免疫チェックポイント阻害剤は併用せず、11種類の腸内細菌のみをマウスに投与した実験でも、一定の抗がん効果は見られたそうです。
腸内細菌はチームで働く
この研究では、がんだけではなく、感染症に対する効果も調べています。
11種類の腸内細菌を混ぜた液をマウスに投与させた上で、食中毒などの原因となる細菌に感染させたところ、腸内細菌を投与しないマウスに比べて体重減少などの症状が軽減されたのです。
この研究によると、11種類の腸内細菌は、どれかが強い働きをしているわけではなく、チームで働くことで、重要な免疫細胞であるCD8T細胞を活性化しているそうです。
では、この11種類の腸内細菌は、私たちの腸にも十分に備わっているのでしょうか?
答えは、「極めて稀少」とのことです。
11種類の腸内細菌は、私たちの体内でも抗がん効果や感染症の予防効果を発揮してくれるのか、どんな生活をしていれば11種類の腸内細菌を保てるのか――など、まだまだわからないことはあります。
でも、腸内細菌が大事ということはやっぱり確かなようです。
参照
◎慶應義塾大学 プレスリリース
「健常者から単離 感染抵抗性や抗腫瘍効果を高める腸内細菌」
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2019/1/24/28-50832/