糖尿病とがんの関係
2018.06.01
糖尿病は、合併症が怖い病気であることはよく知られています。
最初のうちは痛くもかゆくもなく、なんの自覚症状もありません。そんな状態のまま数年が過ぎることが多いので、「まあ、いいか」と放っておいてしまう人も少なくありません。
でも、糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、知らないうちに血管の老化や免疫力の低下などが進んでいます。
そうした結果、いろいろな病気が引き起こされます。
なかでも多いのが三大合併症と言われる、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害の3つです。神経障害(し)と網膜症(め)と腎症(じ)で、「しめじ」と呼ばれることも。
網膜症や腎症がさらに重症化すると、失明、透析の原因になります。そして、神経障害が重症化し、足の感覚が鈍くなると、傷ができたことに気づかず、そのままにしていたら、足の血流の低下や免疫力の低下から壊疽ができ、足を切断しなければいけなくなる……ということもあります。
ですから、どれも放っておいてはいけない怖い合併症です。
糖尿病の人は肝臓がん、膵臓がん、大腸がんになりやすい
ただ、これらの合併症は「糖尿病になると起こりやすい病気」としてよく知られています。
その一方で、あまり知られていないのが、がんとの関係です。
じつは、糖尿病になると、がんにもなりやすいことがわかってきています。
2013年なので少し前のものですが、日本糖尿病学会と日本癌学会が合同で行った委員会「糖尿病と癌に関する委員会」が発表したレポートによると、日本人の男性約16万人、女性18万人を平均10年間追跡調査したところ、糖尿病の人は糖尿病のない人に比べて1.2倍がんになった人が多かったそうです。
がんの種類別では、結腸がんが1.4倍、肝臓がんが1.97倍、膵臓がんが1.85倍でした。
糖尿病になるとがんが増える理由については、インスリン抵抗性が引き起こす高インスリン血症や高血糖状態ががんの増殖に有利となる可能性が指摘されています。
糖尿病とがんの両方を予防するには
こうしたことを受けて、日本糖尿病学会と日本癌学会の合同委員会は次のような提言をまとめています。
・糖尿病(主に2型糖尿病)は、日本人では大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスク増加と関連している
・健康的な食事、運動、体重コントロール、禁煙、節酒は、2型糖尿病およびがんの予防につながる可能性がある
・糖尿病の人は、性別・年齢に応じて適切に、科学的根拠のあるがん検診を受診することが推奨される
・特定の糖尿病治療薬と癌との関係は、現時点でははっきりした結論を得られていない。医師の指示に従って良好な血糖コントロールを維持することが大切
つまりは、たとえ自覚症状がなくとも糖尿病を放っておいてはいけない、ということです。
健康診断で血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が高いことを指摘された方は、そのままにせず、医療機関を受診するとともに、生活習慣を見直す良い機会ととらえ、食事や運動にも気をつかってください。